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社会性を伸ばすために
発達障害の人の支援の実際:社会性を伸ばすために
NPO法人アスペ・エルデの会/中京大学社会学部
/子どものこころの発達研究センター
辻井正次
1. 発達障害のいろいろ-というか、人間はいろいろ
たぶん、実際の姿とあわせると、「発達障害」は誤訳。
特に意識しなくても自然に育つ子どもと、意識してその子どもなりの成長の仕方を教えてあげる必要のある子どもとの違い。特に広汎性発達障害において。
広汎性発達障害:3大兆候--社会性の障害、コミュニケーションの障害、イマジネーションの障害。
2. 発達の道筋--環境条件と密接な関係を持つ
他者との関係の発達の姿
生活のスキルを教えることと、関係性を育むことは相補関係
発達早期であればあるほど、環境調整(「わかりやすい環境であること」)が必要
3. 問題を理解する枠組みをもつこと
発達障害の問題は、重層構造で理解すること。ある1つの部分ばかりで理解しようとしないこと。単一の手法のみで改善することはない。もともとの問題に容易に付加的・二次的な問題が加わっていく。
4. 発達支援の原則
支援のための関係を築くこと
1つずつ必要なことをできるようにしていくこと
周囲との関係を調整すること
5. 社会性の障害:社会性って何?
社会性というと、かなり多義的に使われますが、認知的な枠組み、つまり、知的に把握する枠組みの仕方と関連した内容だとご理解下さい。何か、社会性というものがあるという考えではなく、ある場面や状況において、その場面や状況をどう理解し、場面や状況に対応した行動を、場面や状況にふさわしいあり方でコントロールしつつ、行動できることです。
6. 対人関係と社会性
対人関係ができることと、社会性があることは、理解の側面からすると同義。日本文化的な、「なんとなくわかる」というものがあるという発想ではなく、あくまでも理解の側面で積み上げていくべきもの。
7. 社会的行動の始まりと身体性
抱っこしにくい子ども。身体を母親の腕に合わせることが自然に生じにくい。アイコンタクトを明確にもって、「目は口ほどにものを言う」ことの生じにくさ。ただ、学習できていけること。身体模倣など、練習が必要な場合が多い。
8. 顔の表情-理解と表出
顔の表情を意識的に作ること・他者の顔の表情を正しく理解するには学習が必要。
9. 発達段階や年齢段階にふさわしい仲間関係を作ること
一緒にいたら仲間関係があるというわけではないこと。発達段階ごとでの仲間関係の発達に応じたふさわしさがある。⇒ただ、できなさが一概にいけないわけではなく、子どもの仲間関係の発達の仕方に個人差があるということを理解する必要がある。
10.楽しみや興味、達成感を他者と分かち合うこと
自分から、他者の楽しみや喜びに対して共感すること。自分の興味あることには付き合って欲しくても、他者のことには関心の薄いことも多い。
11.やりとりの相互性を維持できること
やりとりの相互性。幼児期に特にわかりやすい。
12.社会性があること、社会性がないこと
社会性の発達の仕方の道筋の違い!! 社会性そのものは伸びていく。ただ、相手が合わせてばかりだと、社会性の問題に気づかれにくい。日ごろ、子どもがなれた場面でのみ考えると、できなさが見えにくい。
13.社会性を伸ばすこと--ソーシャル・スキル・トレーニング(SST)
単発のプログラムではない。子どもの社会性の発達状況に合わせて、行動の必要性や、実際の行動の実行において、子どもごとでのオーダーメイドで「できることから」積み上げていくこと。
14.まずは基本的生活習慣・身辺自立から
基本的な生活習慣ができていない子どもが多い。基本的な行動1つ1つの習得が必要。
15.指示に従った行動ができること
指示を理解し、指示に従った行動をし、そのことを誉められ、認められること。
16.相手の枠組みに合わせること
自分がどう思うかではなく、大人が明確に設定した行動の枠組みでできることを目指せること。
17.困ったときに、自分からヘルプを求め、より適切な指示を求められること
自分が困っているということを理解し、その場合の行動を起こせること。
18.他者との意見の違いを調整すること--自分の思いと違ったときに譲れること
他者には他者の考えや信念があることが理解できることが「こころの理論」と言いますが、この発達の遅れが指摘されています。自分の考えたことを切り替え、譲るための練習も必要です。
19.文脈が読めること--マインド・リーディングの問題
文脈というものがあるという感じよりは、1つ1つを確認していくことで、全体の把握をするスタイルを教える必要があります。
20.複数の課題があるときに、文脈のなかでの優先順位を把握し、間違いなく行動を制御できること
実は現実の行動って、複合的なもので、それを間違いなくこなしていくことが大切なのです!
21.他者との楽しみの共有
楽しみを他者と共有できること、そうした関係は、他者との程よい関係が基盤。同じ感覚の仲間関係が必要。サポートグループの必要性。
22.必要な支援の枠組みが重層的であるので、いろいろなネットワークが必要なこと
公的な支援でできることとできないこと。(公的な支援の「コスト」の問題)。
社会のなかでの障害理解を創造することのためには多くの努力が必要。
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